3910 エムケイシステムが6月19日に発表した過年度のライセンス費用追加支払い等に関して
6月29日の大引け後、過年度修正決算の会計監査が完了したとして正式に決算遡及額を発表した。
画像出所:株式会社エムケイシステム
今回、過去に遡り正しいライセンス費用を支払っていなかった事が発覚した経緯として、
2017年12月にライセンス供与側から委託を受けた独立監査法人による監査が行われ、
・エムケイシステムの認識 : サービスの利用実績数に応じた課金
・監査法人の認識 : サービス利用可能なIDに応じた課金
との見解の相違が発覚。
これまでの支払いは、エムケイシステム側の認識による実績報告に基づき行われていた。
事前に認識相違を発見・是正出来ず、先方から指摘されて初めて気づくという最悪の結果であった。
監査での指摘を受けて顧問弁護士と共にライセンス供与側との協議の結果、先方の認識・指摘通り
これまでの不足分を全額支払う事になった。
支払金額には不足ライセンス分に相当するものと、契約上のペナルティ条項に相当するものがあり
前者については相当する会計期間(2013年3月期~)の決算修正で、後者については今期に一括して
特別損失として計上する事となった。
修正後の2013年3月期以降の決算(純利益)は、下表の通りとなった。
(売上高その他は省略。 また修正率は未発表、修正後前期比は一部未発表で筆者計算)
対象 | 区分 | 修正前 | 修正後 | 修正率 | 修正後前期比 |
13/03期 本決算 | 単独 | 1.16億円 | 0.99億円 | ▲14.66% | |
14/03期 本決算 | 単独 | 1.24億円 | 0.91億円 | ▲26.61% | ▲0.08% |
15/03期 本決算 | 単独 | 1.28億円 | 0.71億円 | ▲44.53% | ▲21.98% |
16/03期 1Q決算 | 単独 | 0.43億円 | 0.29億円 | ▲32.56% | |
16/03期 2Q決算 | 単独 | 0.86億円 | 0.56億円 | ▲34.89% | |
16/03期 3Q決算 | 単独 | 1.38億円 | 0.92億円 | ▲33.33% | |
16/03期 本決算 | 単独 | 2.06億円 | 1.40億円 | ▲32.04% | +97.18% |
17/03期 1Q決算 | 単独 | 0.47億円 | 0.30億円 | ▲36.17% | +0.03% |
17/03期 2Q決算 | 単独 | 1.08億円 | 0.72億円 | ▲33.33% | +28.54% |
17/03期 3Q決算 | 連結 | 1.49億円 | 0.95億円 | ▲36.24% | +3.26% |
17/03期 本決算 | 連結 | 2.59億円 | 1.86億円 | ▲28.19% | +32.86% |
18/03期 1Q決算 | 連結 | 0.34億円 | 0.14億円 | ▲58.82% | ▲53.33% |
18/03期 2Q決算 | 連結 | 1.31億円 | 0.91億円 | ▲30.53% | +26.39% |
18/03期 3Q決算 | 連結 | 1.88億円 | 1.29億円 | ▲31.28% | +35.2% |
18/03期 本決算 | 連結 | 2.76億円 | 2.04億円 | ▲26.09% | +9.7% |
2013年3月期以降の売上高および各利益の全てが下方修正され、純利益ベースでは修正前と比較して
概ね3割強の減額率となった。
また、6月19日の発表では金額は未定としていた特別損失金額の確定と今期1Q期間中の処理、および
それに伴う今期業績予想の下方修正、予想配当額の減額を合わせて発表した。
契約上のペナルティ条項に相当する違約金の支払用として、今期1Q期間中に 9,400万円を特別損失と
して計上する事とした。
特別損失の計上に伴い、2019年3月期業績予想について純利益のみ下表の通り下方修正された。
前回予想 | 今回予想 | 増減額 | 増減率 | |
売上高 | 23.18億円 | 23.18億円 | 0億円 | ±0% |
営業利益 | 4.31億円 | 4.31億円 | 0億円 | ±0% |
経常利益 | 4.31億円 | 4.31億円 | 0億円 | ±0% |
純利益 | 2.75億円 | 2.11億円 | 0.63億円 | ▲22.9% |
また配当予想は、修正前:11円(期末)→ 8円(期末) に減額となった。
およそ投資先企業を管理・監督・指導する義務は事実上皆無の個人弱小平民株主としては、今回の
事案はまさしく寝耳に水状態で、踏んだり蹴ったり以外の何ものでもない。
また今回の件について、6月21日に開催された定時株主総会に続き、7月30日に ”継続会” と題して
別枠で総会を開催し、株主に報告する事が決定した。
先日届いた通常総会の結果報告には、議案の採択結果と前期末配当の計算書が同封されているだけで、
通常は毎年同封されている株主通信は入っていなかった。
まぁ、そりゃそうだ。 こんな土壇場でひっくり返ったんだから。
印刷会社の方で既に印刷が終わり、同封するだけであった株主通信は全て廃棄処分だ、勿体ない。
株主総会前のこの時期にこんな事が発覚すれば、現場は混乱し、大変である。
今回の発表も何とか6月中に間に合わせたと思われ、当該部署は不眠不休での作業だったに違いない。
しかし今回の一連の発表は会計上の処理の目処を付けてその事実を発表したに過ぎず、なぜこの様な
事態に陥ったのかの原因究明と、それに基づく再発防止策については何も触れてはいない。
その点が明らかにされないと株主としては不安になるが、そこは ”継続会” という名の株主総会の
2次会で、報告書を基にたっぷりと説明してくれるのであろう(と期待している)。
ソフトウェアはハードウェアと異なり目には見えず、一旦入手後は基本的にはコピーしてしまえば幾ら
でも使える性質のものである。
だからこそ、その管理は慎重に行う必要がある。
企業内部で使用するソフトウェアでも当然正しく管理すべきであるが、ましてや今回は顧客に販売して
いるサービスで使用されているソフトウェアである。
企業のコンプライアンスとして、当該契約に基づき正しく供与を受け、必要な使用料を正しく申告して
支払うのは当たり前である。
CuBe事業での子会社BNCの暖簾代償却や、社労夢事業での開発費負担などまだまだ費用が先行しており、
今後の安定した増収増益に向けて頑張ってほしい大事な時期である。
今回行われた役員報酬の減額や内部統制体制の是正は当然であるが、それ以前に今回の様な業務に直結
した事項に関する重要な誤りを二度と発生させない様、是正処置を行って頂きたい。
事業の成長には期待しており、今後もつまらぬミスで株主をガッカリさせない様にしてほしい。
[成長株への長期投資~経済的自由人を目指して~ 記事 No.00277]
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