6035 アイ・アールジャパンホールディングス から先般、”アニュアルレポート 2018 年次報告書”
と題した株主通信が届いた。
初めに、「株主の皆様へ」と題したメッセージ。
※赤下線は筆者追記、以下同様。
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス アニュアルレポート 2018
”我が国の資本市場の改革者として、次なる成長ステージでの挑戦を続けます” とのサブタイトルが
付けられ、成長に対する想いが綴られている。
上場企業と株主の関係を巡る環境の変化を、下記の通り表現
・ESG投資の拡大は、外国人のみならず国内機関株主による議決権行使の厳格化を加速させている。
・機関株主の日本株保有比率は過半数を突破しており、企業経営上彼らとの対話は重要度を増している。
・業績不振、不祥事、M&A、内部保留、株主還元等ガバナンスに問題の企業をターゲットとする
アクティビストの活動が本格化。
この環境変化を好機と捉えた当社の取組みと、その効果を下記の通り表現
・顧客本位を絶対基準とする、独立系の唯一無二のコンサルティング能力を一段と拡充
・丸の内に金融、法務、監査の専門家を集結し、投資銀行本部を独立
・霞が関のIR・SRコンサルティング本部も、能力を向上させるべくAI等を活用したシステム体制を構築
・この結果、多様なソリューションを提供する機会、M&Aに関する受託が格段に増加
・40年振りに新規参入した証券代行受託数も、そのプレゼンスを訴求できるまでに着実に伸びた
・この結果、過去最高の業績と配当還元を発表。
・(今後)より改革のスピードを上げ、更なる成長へのステージでの挑戦を続けて行く。
当社の行っているサービスは正に日本の株式市場で起こりつつある大きな変化を捉え、その時流に
マッチしたものである。
黙っていても需要が発生し声が掛かると思うが、受け身の姿勢では無く様々な工夫を凝らしてサービス
の精度向上や新たなサービスの開始、組織の改編等を行っている。
現状の最高益に満足せず、今まで以上に改革を進めて次なる高みへの挑戦と実現を目指している。
成長への飽くなき想いが、これらの文章を通して伝わってくる。
株主としては、本当に期待したくなる企業である。
続いて、各サービスの状況について。
<SRコンサルティング>
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス アニュアルレポート 2018
・外国人株主比率が増加する一方、コーポレートガバナンス・コードやスチュワードシップコードに
よる安定株主の減少、企業の不祥事や株主提案の増加によりSR(株主対応)コンサルティングの
必要性が更に増し、業務が増加した。
安定株主の減少に伴い、国内・海外の実質株主判明調査の依頼が増加している。
また、株主総会の議決権賛否の予測や賛成票確保の要請が増加している。
今後も様々なアクティビストの台頭により、SRコンサルティングの需要は益々活発になるだろう。
新たな需要の掘り起こしやそれに対応したサービスの開発により、その成長は目覚ましいものになる。
大いに期待したいセグメントである。
<ガバナンス・コンサルティング>
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス アニュアルレポート 2018
・CGコードによる上場企業取締役会の実効性評価が3年目を経過し、第三者機関を起用した高水準の
評価が求められている。
・2018年6月から改正される、コーポレートガバナンス・コードに対応した新サービスも既に開発。
子会社による調査では、第三者機関を使用した評価を採用した企業はまだ 23%程度に過ぎず、
自社による評価が 74%程度と高い割合となっている。
今後は外部機関による評価の採用が増加すると見られ、当社にとりビジネスチャンスとなっている。
また、2018年6月1日から適用開始された改正コーポレートガバナンス・コードが大きな商機となる。
改正のポイントとしては、
・政策保有株式の保有割合の削減
・最高経営責任者の選任や解任に掛かる手続きの透明性確保
・社外取締役の、女性や外国人を念頭に置いた多様性の向上と活用
・資本コストの把握
があり、経営者の選任を含めた経営の透明性を、生きた株主と社外取締役の監視下におく事で確保
するという狙いがあると思われる。
また改正と同時に「投資家と企業の対話ガイドライン」が策定・適用され、機関投資家と企業の対話
において重点的に議論することが期待される事項が定められている。
今回の改正により、上場企業の経営者は「生きた株主」と積極的に対話し、株主が負担している資本
コスト(=株主が感じている、背負っているリスクに見合う期待値)を理解し、そのコストに見合う
リターンを還元出来る様にすることが求められる。
そして改正後のコードに対応したコーポレートガバナンス報告書を、12月末迄に提出する必要がある。
当社はこれをクリアするための改善施策の提示や対応サービスの提供が見込め、大きなビジネスチャンス
になると感じている。
<投資銀行業務>
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス アニュアルレポート 2018
・アクティビスト等からの株主提案の増加等によりPA(プロキシーアドバイザリー)業務が大幅に増加した。
・大型M&Aのアドバイザリー業務実績により、投資銀行部の認知度が高まりつつある。
・未上場企業との関係を強化し、今後のM&A案件も順調に増加。
株主提案が行われた企業数は増えており、中には提案が可決されてしまうケースもある様である。
アクティビストのターゲットとなるリスクの分析から実際に株主提案やM&A、敵対的TOBが行われた場合
の防衛サポートまで、経営者として最善の対策を実現するサービスは、これからも大きな成長を遂げる。
上場企業同士のM&A案件参画により知名度が向上し、加えて未上場企業へと裾野を拡げる事で今後M&A
関連サービスは有望な成長分野となるはずである。
<証券代行事業>
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス アニュアルレポート 2018
・管理株主数は 288,528名(前年は 252,314名)
・受託決定企業数は 60社(前年は 46社)
・新規上場企業をはじめ、受託社数が着実に増加
株式を取り巻く各種サービスを展開しており、当然株式自体の管理業務を行うのは自然の成り行きである。
今後も地道にしかし確実に、その知名度の向上やコンサルティング等サービス受託を契機に管理受託社数
を伸ばして行く事となろう。
典型的なストックビジネスであり、売上・利益の安定的な成長が期待出来そうである。
全体としては、これまでに関連するサービスは確実に増え続けている。
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス アニュアルレポート 2018
最後に、これまでの株価の動きを確認する。
同社株式の日足チャートと、四半期決算における純利益の推移を表示したのが下記の図である。
チャート出所:YAHOO! JAPAN by WORKS TECHNOLOGY
全体相場がモタモタしている中、強い動きである。
今年3月くらいまでは一息いれていたが、5月以降は順調に評価されて来ている。
上場企業を取り巻く経営・株式環境の変化に、マーケットも次第に同社の成長性を評価しつつある。
今後の大きな成長を確信し、その実現を楽しみに今後も株主として投資を続けて行きたい。
[成長株への長期投資~経済的自由人を目指して~ 記事 No.00278]
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