6035 アイ・アールジャパンホールディングス が7月31日の正午、2019年3月期の第1四半期決算
を発表した。 また同時に、8月末を基準日とした株式分割(1:2)を発表した。
指標毎の着地状況は、下表の通りとなった。
実績 | 前期比 | 通期会社予想 | 進捗率 | |
売上高 | 13.87億円 | +20.5% | 46.00億円 | +30.15% |
営業利益 | 5.59億円 | +15.3% | 13.00億円 | +43.00% |
経常利益 | 5.77億円 | +18.8% | 13.00億円 | +44.38% |
純利益 | 3.93億円 | +19.3% | 8.88億円 | +44.26% |
前期と比較して増収増益、純利益は +19.3%で1Q期間としての過去最高益を更新した。
通期予想に対する進捗率は、営業利益で 43%、経常利益・純利益は 44%台と高進捗で着地した。
まるで、進捗の遅い企業の2Q決算を見ているかの様な進捗率である。
会社は通期予想を据え置いたが、誰がどう見ても何れ上方修正が必至であろう。
<1Q期間の総括>
・上場企業の海外/国内機関株主のシェアが上昇、同株主によるスチュワードシップ・コード
採用により議決権行使の厳格化が進む
・アクティビストに加え、伝統的な機関株主を含む株主からの提案数が過去最高となり
議決権の安定確保に向け、これまでにない緊迫感が広がる
・この状況下で、既存顧客に対するSRコンサルティングサービスへの評価が一層高まる
・新規顧客に対しても、当社グループのサービスの活用が広まる
・自社株TOB等のアドバイザリー業務等を含め投資銀行業務が本格的に稼動
・以上の結果、営業利益は投資銀行部の新オフィス費用や人件費の増加をこなし15.3%増加
2018年6月の株主総会における、株主提案状況 決算説明資料より(※赤線は筆者による追記)
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス 2019年3月期 第1四半期決算説明会資料
6月の定時株主総会では、7の機関投資家から10の企業に対して提案が行われた。
日本の上場企業数は現在 3,600社余り。 その内、3月期決算企業はおよそ 2,400社程度。
そして実際に機関投資家から株主提案を受けたのはその内の僅か10社、確率にして 0.42%である。
何だ少ないじゃないか、緊迫感が広がる?
全く問題ないのでは? と思うかもしれない。
しかしその数は、少ないながらも確実に増加傾向にある。
そして当社は、その程度の数でも好業績を上げているのだ。 今後の成長余地、伸び代は大きい。
企業経営においては、確率は少ないとはいえ起こり得る可能性のある事象(リスク)については
予め対策を講じる(リスク分析を行い、対応を決めておく)必要がある。
今後の同社のビジネスにおいて、そのネタに困る事はない。
そして本格的に立ち上がった投資銀行業務にも、今後の確実な成長を期待したい。
<IR・SRコンサルティング>
・売上高は、前年同期に比べ23.2%増加
・上場企業が議決権対策の重要性を認知し、SRコンサルティングに対する認識が新たなものに
・日本株式の国内・海外議決権行使担当者約 5,850名を常時カバーする機関株主情報サービスは、
品質/迅速性が群を抜いており、クロスボーダーのM&A案件で価値が一段とクローズアップ
・個人株主への対応も、独自の多様なサービスにより受託が大きく増加
・投資銀行部専門部隊は、委任状争奪戦での圧倒的な勝率を武器に大口案件の受託を拡大
・従来はプロキシーアドバイザー領域までの事業を、大規模な自社株TOB実施に関するFA案件の
獲得により、フィナンシャルアドバイザー領域までその事業を拡大
・純粋なM&A案件の要望が高まり、資産売却等も含めて投資銀行部のパイプラインは拡充
2018年6月の株主総会における、主なプロキシー案件 決算説明資料より(※赤線は筆者による追記)
画像出所:株式会社アイ・アールジャパンホールディングス 2019年3月期 第1四半期決算説明会資料
6,000名に近い国内、海外のアクティビストや機関投資家を常にカバーし、好品質のコンサルティング
やソリューションを提供する。
一朝一夕には出来ない事業であり、グループの金融独立系を前面に打ち出した当社ならではである。
その絶対的優位性は、今後も崩れる事がないだろう。
また投資銀行部による大口案件やFA案件の受託により、そのビジネス領域を拡大している。
そしていよいよ、今後の純粋なM&A案件の受託に向けて下準備が進められている。
新たな成長の源泉が次々と湧き出ており、否が応でもその今後に期待が掛かる。
<ガバナンスコンサルティング>
・機関投資家の社外取締役の独立性基準の厳格化や、取締役会の多様性を求める動きより
独立社外取締役紹介サービスが増加
・6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードは、対応に向け企業や機関投資家の関心が高く
機関投資家を意識したコンサルティングの増加を予想
<証券代行事業>
・受託企業は7月31日時点で昨年に対し 48→69社、管理株主数は 242,875→315,132名に増加
・受託企業の株主数増加により、管理株主数が事業開始以来初めて30万名を突破
<ディスクロージャーコンサルティング >
・売上高は、前年同期と比較して 6.0%の増加
・ESG等の非財務情報を重視する投資家が増加し、対応が必要な企業のニーズに対してESG情報開示
に関するコンサルティングや、統合報告書制作の提案機会を確実に捉えた
何れも、確実に成長を遂げている。
特に、この6月にコーポレートガバナンス・コードが改訂され、今後のビジネス需要が増すだろう。
今後の展開が楽しみである。
証券代行事業は地味ではあるが、美味しいストックビジネスである。
もちろん多少の他社への鞍替えは発生するが、基本的には今後も安定した収益の提供に貢献する。
またESG投資(環境・社会・企業統治に配慮した企業への投資)の機運の高まりを受け、関連情報に
関するサービスも新たな事業のネタになりつつある。
次に、四季報夏号の記載。
【最高益】
IR・SRコンサルは実質株主判明調査拡大。
投資銀行はアクティビスト対応助言業務増勢。
ディスクロコンサルは統合報告書関連貢献し回復。
人員増や拠点開設負担こなし最高益続く。 連続増配期待。
【開 拓】
投資銀行は金融ソリューション軸にM&A市場を開拓へ。
AI使ったアクティビストによる大量保有リスク分析事業開始。
企業ガバナンス改革支援事業を育成。
確実な統合報告書関連、そしてAIによるアクティビスト大量保有リスク分析事業にも期待したい。
主要事業であるIR・SRコンサルティングの成長に加え、FA案件の受託増や今後の純M&A案件の開始
といった投資銀行業務の今後の展開。
そしてESG投資といった、新しい投資に対する企業向けサービスの始動。
大きな夢と期待を持って、当社を見ている。
それでは最後に、これまでの株価の動きを確認してみる。
同社株式の週足チャートおよび四半期決算における純利益の推移は、下記の通りである。
画像出所:YAHOO! JAPAN
株価は決算発表の前日となる7月30日にM&A関連企業の下げを受けて大きく下落。
発表当日はその分を戻し、翌8月1日に 4,035円と上場来高値を更新。
しかしその後は全体相場の下落とともに軟調な動きで現在は 3,500円程度となっている。
ここは今後の成長を鑑みると、中期的には広い所であると感じている。
今後も当社の成長には様々な事業で期待しており、株主として引き続き応援して行きたい。
本当に将来の成長が楽しみな企業である。
[成長株への長期投資~経済的自由人を目指して~ 記事 No.00318]
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