投資全般

貯蓄から投資へ。でもその前にやるべき事がある

“貯蓄から投資へ” というスローガンが官主導で使われる様になったのは、2001年頃からである。
それから16年が経過して、現在家計の金融資産とその構成はどうなっているのだろうか。

日本銀行調査統計局が9月20日に発表した2017年第2四半期の資金循環(速報)によると、
下記の通りとなっている。

資産種別 資産額 割合
現金・預金 945兆円 51.6%
債務証券 24兆円 1.3%
投資信託 100兆円 5.5%
株式等 191兆円 10.4%
保険・年金・定型保証 520兆円 28.4%
その他 52兆円 2.8%
合計 1,832兆円 100.0%

政府の掛け声も空しく、現金・預金と保険・年金・定型保証で80.0%となっており、債務証券と
投資信託、株式等は17.2%止まりである。

相変わらず、預貯金と保険等が殆どを占めているという結果である。
次に、年代別に見た金融資産の保有状況を確認してみよう。

総務省が7月28日に発表した、2017年第1四半期の家計調査における世帯主の年齢階級別の
貯蓄及び負債の1世帯当り現在高によると、下記の通りとなっている。

年齢 貯蓄(万円) 負債(万円) 合計
預貯金 生保等 有価
証券
その他 不動産 不動産
以外
その他 金額
(万円)
割合
~29歳 311 119 17 20 483 14 20 ▲50
~39歳 473 130 28 22 1,066 35 21 ▲469
~49歳 662 263 122 67 993 46 18 57 1%
~59歳 962 442 252 88 539 49 26 1,130 20%
~69歳 1,433 526 316 30 176 23 16 2,089 37%
70歳~ 1,647 363 388 7 79 23 5 2,297 41%

  注) 合計は四捨五入のため、金額は必ずしも一致せず割合も100%にはならない。

貯蓄と負債を合わせた金額がトータルでプラスになるのは40代以上であり、特に30代は500万円近く
マイナスである。

これはやはり、組んだばかりの住宅ローンの影響が大きいと思われる。
40代はほぼ均衡圏であり、この年代でやっと貯蓄がローンに追いつく。
(私はバリバリの債務超過であった。不動産購入有無で大差があるだろう)

そして50代で初めて、1千万円超のプラスとなる。
つまり、貯蓄と負債のネットで純資産を有するのは50代以上という事になる。

勿論、ここには不動産の評価額は含まれてはいない。
そして特に、60代以上で全純資産の78%を独占している。

つまり、純粋に金融資産を保有しているのは50代以上であり、その殆どを60代以上が占めている
という事になる。

一方、ここで定義している「貯蓄」と「負債」に占める各割合はどうか。

年齢 貯蓄(%) 負債(%)
預貯金 生保等 有価証券 その他 不動産 不動産以外 その他
~29歳 66 25 3 4 93 2 3
~39歳 72 20 4 3 95 3 2
~49歳 59 24 11 6 94 4 2
~59歳 55 25 14 5 88 8 4
~69歳 62 23 14 1 82 11 7
70歳~ 68 15 16 1 74 21 5

  注) 割合は四捨五入のため、合計は必ずしも100%にはならない。

どの年代も、預貯金と保険を合わせると80%を超えており、日銀の調査結果と大体一致している。

そして有価証券は全ての世代で保有割合が少ないが、特に若い世代ほど保有割合も少ないという
結果となっている。

これは、少々意外であった。

高い世代が少ないのは想定していたのであるが、20代から40代までがこんなに少ないとは思って
いなかったのだ。

特に30代までが非常に少ない。
この年代は生まれてこの方、日本はデフレで実体験として経済成長を感じた事が無い。

それでも投資をしていない。

逆に政府がお目当てとしている現在60代以上の人は、今の年金制度でも何とかやっていけると
思っている人が多いのではないかと推察している。

だとすれば、敢えてリスクを取り馴染みの無い有価証券に手を出す全く必要はなく、
今の資産を出来るだけ減らさずに人生を全うしようと考えるだろう。

この年代の方は日本の高度成長期に働いて来た人達であり、当時はわざわざ投資などせずとも
国全体が成長期であり、働くだけで収入は自然に増えて貯蓄は貯まり、生活は豊かになった。

そして当時は政府の財政も豊かであり、一貫して貯蓄を奨励していた。

今更政府に投資に切り替えろと言われても、今までの人生で身に付けた習慣を変える事は
もう出来ないだろう。

人生後半にもなれば、保守的になり出来るだけ新しい事には手を出さない。
至極当たり前の結果である。

政府はもう保守的な高い世代の人を当てにせず、もっと若い世代の育成に
力を入れるべきであろう。

何故20代・30代の人がゼロ金利にも係わらず、NISAというアメを与えても投資しようとしないのか。
そこを真剣に考える必要がある。

ネットでの金融資産は少ないかもしれないが、20代・30代の人がもっと投資を身近に感じ、
将来のために必要である事を皆が認識出来る様に粘り強くアピールすべきである。

特に今から力を入れなければならないのが、子供達への教育である。

日本は何と言っても、個人の金融リテラシーを高めるための教育環境がそのフレームワークを含めて、
ほとんど整備されていない。

株式投資はイコールお金儲けであり、博打であり、普通ではない特殊な裏社会の汚い行為の様な
印象すら、一般の人は描いているのだ。

自分は真っ当な人間であり、その様な行為には手を染めないという様な風潮すらある。
これからの日本は、勿論それではいけない。

因みに、私はギャンブル(パチンコ・競馬・競輪・競艇)は全くやらない。
麻雀は多少嗜むが、レートはサラリーマンレートであり、低いほど良い。

そんな私であるが、株式投資は行っている。 それは正攻な投資を心がけ、出来るだけギャンブルでは
無いやり方を選択しているからである。

話しを元に戻すと、株式は正に資本主義社会の仕組みそのものであり、
これは社会科の範疇であろう。

一部にはその様な試みも始まってはいる様であるが、社会科の授業として企業イコール株式の仕組みを教える。

株式投資は決して悪い事では無く、社会に役立つ意義のある行為である事を今から未来の投資家と
なる子供達に、繰り返し丁寧に教育すべきであろう。

NISAやiDeCoなど、小手先の仕組みをせっせと整備するのも大切であるが
その前に未来を見据えて、他にもっとやるべき事があるのではないだろうか。

[成長株への長期投資~経済的自由人を目指して~ 記事 No.00085]

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

管理人プロフィール

 Author : 圭壱

 Twitter : 圭壱@長期投資

 50代の会社員。

 2013年より日本株を対象とした

 成長株への長期投資を実践。

 投資先企業の活動を通じた社会貢献と同時に、投資

 資本の成長を目指す。 最終目標は経済的自由人。

 詳細は ---> 管理人プロフィール

保有株式の年末評価額 (単年率・累計率)

 2013年12月  1,560 万円でスタート

 ・2013年   1,567 万円 ( +0%

 ・2014年   1,923 万円 ( +23% ・ +23%

 ・2015年   2,297 万円 ( +19% ・ +47%

 ・2016年   2,695 万円 ( +17% ・ +72%

 ・2017年   4,739 万円 ( +76%+203%

 ・2018年   4,180 万円 ( ▲12%+166%

 ・2019年   5,988 万円 ( +43%+283%

 ・2020年   9,634 万円 ( +61%+517%

 ・2021年   6,549 万円 ( ▲32%+319%

カテゴリー

  1. アビスト

    6087 アビスト 2019年9月期・2Q決算を発表、4%減益
  2. ポートフォリオ年間状況

    ポートフォリオ年間状況(2017年)
  3. エスティック

    6161 エスティック 続伸し株価 5,000円台達成
  4. ポートフォリオ月間状況

    ポートフォリオ状況 (18/06/01) ~減資したが含み益率は上昇~
  5. セントケア・ホールディング

    2374 セントケア・ホールディング 18年3月期本決算発表
PAGE TOP