投資用に唯一保有する、ワンルームマンションの賃借人に関する実話である。
今から17年ほど前になるが、2002年11月にそれまでの賃借人の自己都合による退去に伴い
地元の不動産管理会社を通して、新しく募集をかけた。
毎月の賃料は 70,000円、これは新築での購入当初から変更していない金額である。
相場は多少落ちており、比較的強気の設定であったがクロスの張り替え等の最低限の部屋の
リニューアルは行っており、そのままの金額で広告を出してもらった。
すると12月に入りほどなく、担当者から「希望者が出た」との連絡が入った。
ホっとすると共に、軽く事情を聞くと「30代のOLで、同じマンションの部屋を借りていたが
オーナーに事情があり契約を終了したいとの要請があり、移りたい。」との事であった。
同じマンション内で引越し?
オーナーさんの子供でも住まわせるのかな?
と思ったが余り深く考えずに了承し、契約することにした。
この時はまだローンを毎月支払っており、とにかく空き部屋になるのは困るのだ。
その筋の方とかでなければ、基本的にはウェルカムである。
契約締結は不動産管理会社の店頭で、3者対面により行った。
実際に会い会話した印象としては特段問題はなく、普通のまじめそうなOLであった。
前の部屋を退去となる理由までは深くは聞かなかったが、とにかく同じマンションで助かる
という事であった。
助かる、という点ではこちらも同様である。
多少強気の家賃設定であったが、これについての要望も特に出なかった。
間髪入れずに同じ家賃で借りてくれて、正にありがとうである。
こうして当日は物件に案内して内装や設備について了解をもらい、敷金2ヶ月分と12月の日割
+1月分の家賃もその場で支払われ、とくに問題無く契約を交わし、鍵を引き渡した。
ところがこの女、超いい加減だったのだ、
この女は結局 2016年10月までのほぼ14年間、私の部屋を借り続けた。
その間、次の様なことがあった。
1.排水管清掃に協力しない
マンションの排水管には各部屋のヨコ管と、それらが合流するタテ管がある。
これらの排水管には内部に少しずつ汚れが付着するので、定期的に業者が高圧水を強制的に
流して清掃する。
ヨコ管を清掃するにはそれぞれの住居内に入る必要があるため、住民の協力が欠かせない。
管理組合は清掃の実施に当たり、平日・土日を含めて複数日のアンケートを事前に取り、
可能世帯が多い複数の日に実施している。
ところがこの女は、こうして協力し易い体制を取っているにも係わらず、途中で4回(4年)
連続で掃除をさせてくれなかったのである。
不動産管理会社を通して理由を訪ねると、「だって無理なんですよ」と言ったそうである。
このまま清掃をせず、汚水が下の階に漏れたらアナタの責任で賠償金を払ってもらいますよ
と強硬に接して、ようやく5年目に清掃を果たしたのである。
2.契約更新時の無断欠席
賃貸借契約の期間は2年間なので、引き続き借りる場合は2年毎に更新する。
契約更新時も基本的には店頭で3者対面により行っていたが、ある更新時に決められた日時に
店頭に行き担当者と待っていると、時間を過ぎても一向に女が現れない。
最後は担当者が本人に電話連絡すると、「熱が出て行けない」との事。
オイオイ、無断欠席かよ。
これでは全くの子供である。 こちらは交通費を掛けて出向いたのに、無駄に終わった。
仕方がないのでこの時は、後日郵送にて対応した。
3.家賃を毎月キチンと払わない
最大の問題は、これである。
この女との契約までは、本人から直接大家である私の口座に振込む方式となっていた。
現在では間に保証会社が入るのでこの様なことはないが、この時は女の行動次第である。
契約では、翌月分の家賃を末日にこちらの口座に着金する様に振込む事になっていた。
ところがこの女、すぐに馬脚を現した。
実質的な最初の振込みである2月分について、3日間延滞したのである。
この女の前の複数の賃借人は皆さんその様な事はなく、必ず期日までに振込まれていたので
私は少し驚いたのである。
続く3月、4月分は期日前に振込まれたが、5月分は6月分と合わせて16日延滞して振込まれた。
つまり、2ヶ月分となる14万円が5月の中旬に振込まれたのである。
全くいい加減やなー。
この時から、2~3ヶ月分がまとめて振込まれるのが常態化した。
しかも最初の月(翌月分)は、ほぼ毎回何日か延滞するのである。
中でも一番酷い時は、6ヶ月分が一度にまとめて振込まれた事があった。
5月~10月分が、6月18日に入金されたのである。
最初の月は49日延滞、次の月は18日延滞である。
いやはや、開いた口が塞がらないとはこの事である。
半年に1回しか銀行のATMに行けないこの女は、一体何者であろうか。
私は次第に、この様に毎回遅延し数ヶ月分も一度に払う事を繰り返しているこの女は、もはや
何月分までを払っているのか自分でもわからなくなっているのではないか、と思う様になった。
私は勿論全てを把握しているが、この女には恐らく出来ていないだろう。
さて、私は以降延々とこの様ないい加減な女が自己都合で退去するまでの14年間、部屋を貸し
続けたのであるが、それは何故であろうか。
勿論それは、私なりの戦略があったためである。
この女の状況であるが、家賃は毎回延滞するが、時々複数月分をドカっと振込んでおり、お金に
困っている訳ではない。
男に貢いでいるとか、ブランド買いとか、ギャンブルに散財している訳でもなさそうである。
要するに、普通の人なら当たり前の様に出来る「毎月決めた日にATMに出向いて振込む」という
行為が、単に出来ないだけなのである。
普通に仕事はしているが、普通の行動が取れないだけである(少し矛盾しているが)。
会社で何か大きな問題になっていないのか心配だが、稼ぎがあるのなら私としてはOKである。
方や私が一番心配していたのは、家賃の下方圧力である。
家賃には下方硬直性があるとはいえ、建物の築年数の積み重ねと共に相場はやはり少しずつ
下がって来ている。
私はこの女に賃貸中も、マンション名で検索し他の部屋の賃料相場を時々監視していた。
最後の方は14年の歳月の経過と共に下落し、遂に同じ階で 63,000円の募集広告を見付けた。
現在女に貸している 70,000円とは、大きな開きである。
そして一方では、私はこうも思っていた。
この女は、幼稚で世間知らずの傾向がある。
他の部屋の相場など、必要が無ければ見ない。
だから家賃の値下げなど、要求しては来ない。
だから私は家賃の延滞については敢えて督促せずに、この女が万一家賃の値下げを交渉して来た
時のジョーカーとして取っておいたのである。
私の弱みは、相場より高い家賃。
女の弱みは、常態化した家賃の延滞。
家賃の延滞により私がいつも嫌な想いをしているのは事実なので、これでおあいこである。
銀行のATMで通帳に何も印字されないと、本当にガッカリするのである。
そしてこの女が自己都合で遂に退去することになった2016年10月、私はかねてからの計画を
実行する事にした。
家賃については想定通り女からの値下げ要求はなく、最後まで 70,000円で借りてくれた。
そして私は女から家賃が振込まれた日と延滞日数をエクセルにまとめ、集計した。
その結果、14年間の合計延滞日数は何と 1,099日に及んだ。
そこで次の様な文書を作成し、集計表と共に不動産管理会社の担当者にメールで送った。
賃借人名は、仮に田中とする。
契約書上には延滞損害金として、
・本契約より生じる金銭債務の支払いを遅滞したときは、年(365日当たり)14.6%の割合に
よる延滞損害金を支払うものとする。
と記載されている。
長年に亘り恒常的に延滞を繰り返しており、契約更新時に不動産管理会社から本人に注意しても
改善されない。
契約終了に伴い、一括で支払ってもらいたいが問題ないか?
と担当者に確認すると、契約に沿った要求であり特に問題ないとのこと。
結局、契約時に預かった2ヶ月分の敷金は、本人責任によるフローリングの欠落や浴室補修などの
現状復帰費用である11万円と合わせ、返還金額はゼロとなった。
退去は急に決まり直ぐに引っ越したので私はこの女とは対面していないが、延滞損害金については
「何ですか? それ」との発言があり、後日私に直接問い合せるとの事であった。
しかし遂に、この女からの連絡はなかった。
こうしてこの女との、14年間に及ぶ関係は幕を閉じた。
私にとっては嫌な想いと引き替えに、収入面では貢献してくれた女であった。
同時に世の中には、当たり前の事が当たり前には出来ない人間もやはりいるのだな、と改めて
思い知らされた出来事でもあった。
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[成長株への長期投資~経済的自由人を目指して~ 記事 No.00398]
こんな人がいるとは・・。非常に興味深く面白い(圭壱さんは大変だとおもいますが)記事でした。属性等が問題無いとしてもその人自身に問題がある場合はちょっとした面接等では判断は難しいですものね。きっとお金、時間、その他もろもろにルーズな人なのでしょう。圭壱さんの対処やクレバーな考え方に関心致しました。
ゆうさん、こんにちは。
ありがとうございます。
まぁちょっと色々難ありの人でしたが、大きな問題には発展しなくて
結果的には良かったです。ただもう、こういう人はゴメンですが。