4397 チームスピリットが 7月12日、ストップ安となった。
画像出所:YAHOO! JAPAN
ストップ安の1本値ではあるが、前場と大引けで値が付き、34万株程度は成立している。
一体、何があったのだろうか。
前日11日の大引け後に2019年8月期・3Q決算を発表しており、結果は下表の通りである。
実績(億円) 前期比(%) 対通期予想 進捗率(%) |
通期予想(億円) 前期比(%) 直近進捗率(%) |
||||
1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 会社予想 | |
売上高 | 3.94 – +21.08 |
8.43 – +45.10 |
12.99 +46.6 +69.50 |
– | 18.69 +51.7 +69.50 |
営業利益 | 0.10 – +4.00 |
0.90 – +36.00 |
1.48 +103.8 +59.2 |
– | 2.50 +259.7 +59.2 |
経常利益 | 0.09 – +3.60 |
0.9 – +36.00 |
1.48 +105.9 +59.2 |
– | 2.50 +361.5 +59.2 |
純利益 | 0.04 – +1.73 |
0.67 – +29.00 |
1.16 +136.5 +50.21 |
– | 2.31 +152.7 +50.21 |
通期予想に対する進捗率は純利益ベースで 50%程度だが、そのスピードは加速している。
この内容で、売られてしまうのだろうか?
_
次に、これまでの株価の動きを確認してみよう。
下図は、同社株式の週足チャートおよび四半期決算における純利益の推移である。
チャート出所:YAHOO! JAPAN by WORKS TECHNOLOGY
同社は、2018年8月に東証マザーズに新規公開。
公募価格は 1,200円、初値は 2,417円で約2倍となり、上々のスタートとなった。
(※何れも、株式2分割前の当時の値)
この時点での2018年8月期の予想 EPSは 2.09円、PERは公募で 574倍、初値で 1,156倍である。
その後10月15日に発表された結果は、EPSは 13.1円。
結果的に、初値のPERは 184倍に下がった事になる。
そして4月11日に2Q決算と株式分割が発表されると、マーケットは大きく反応し株価は急騰。
以降は6月中旬まで、3,000円前後で推移していた。
_
同社はその社名の通り、「TeamSpirit」という働き方改革に関するプラットフォームを
クラウドで提供している。
このソリューションを採用する事で、勤怠管理や就業管理、経費精算、工数管理、稟議申請
といった事務作業を効率的に行い、作業量を大きく減らす事が可能である。
当然ながら利用は月額課金制であり、採用企業の増加に伴いストック収入が積み上がる。
画像出所:株式会社チームスピリット 2019年8月期第3四半期 決算説明資料
今期も3Q時点で、「TeamSpirit」の契約ライセンス数・社数は共に大きく伸びている。
また世界最大のクラウド型CRMを提供する米Salesforce社と提携、同社のパートナープログラム
「AppExchange Partner Program」の「AppExchange Premier Partner」に認定されている。
いわばSalesforce社がビジネスを有望であると認め、お墨付きを与えている状態である。
_
しかしそのSalesforce社であるが、一方では中々したたかな一面を覗かせている。
チームスピリットのIPO時点では同社株式を 13%程度保有していたがが、その後2ヶ月の間に
10%弱を売却している。
以下は、大量保有報告書の提出から見た売却の推移である(EDINETより)。
提出日 | 保有株数 | 保有比率 |
2018/08/27 | 973,400株 | 13.32% |
2018/08/31 | 882,500株 | 12.07% |
2018/10/03 | 789.900株 | 10.70% |
2018/10/09 | 698,700株 | 8.95% |
2018/10/17 | 611,400株 | 7.83% |
2018/10/18 | 429,100株 | 5.50% |
2018/10/24 | 302,900株 | 3.88% |
最後の提出となった10月24日以降は保有比率が 5%を下まわっており状況が不明であるが、
更に売却を進めている可能性もある。
この辺りは「投資家」として、ドライに割り切っているという事なのであろうか。
_
さて、それでは今後の株価はどう動くのであろうか。
下図は、同社株式の日足チャートである。
チャート出所:YAHOO! JAPAN by WORKS TECHNOLOGY
今期予想EPSは 14.72円であり、現在の株価 2,070円での予想PERは 140倍である。
初値で 1,156倍、今期予想発表翌日の10月16日は 1,127円で、71倍であった。
Salesforce社との提携を武器に、「働き方改革に関するプラットフォーム」という時流の
テーマに沿ったストックビジネスの高成長を、マーケットは評価しているはずだ。
いわば将来の夢を投資家は買っている段階であり、それが今回の3Q決算で一斉に現実に戻る
というのも、何か解せない。 しかも、進捗率は段々と加速しているのである。
足下のPERは無視して買われている段階で、今期の予想が仮に未達に終わったとしても将来の
成長から見れば、大した問題とも思えない。
1本値のストップ安とはなったが、前場にも取引が成立してある程度の出来高があった事は、
今後の戻りを暗示している様にも見える。
勿論、需給が崩れて直近では更なる下落も十分に考えられるが、中期的にはもしかすると大きな
チャンスなのかもそれない。
大きな期待を背負う、高成長・高PER銘柄への投資の難しさを感じた出来事であった。
<ブログ村ランキングに参加中。ランクアップにご協力下さい(→ありがとうございます)>
[成長株への長期投資~経済的自由人を目指して~ 記事 No.00473]
この記事へのコメントはありません。